◆S53. 4.28 名古屋地裁 昭和43(行ウ)9 補償金増額請求事件(8)
して取引の対象ともなりえない。堤防が莫大な資本を投下して築造されたとしてもその投下資本は堤防によつて形成された堤内の土地に還元され、その交換価値については最有効使用の原則が働き、より高度の交換価値に化体されるから、土地とは別に補償の対象とはならない。
さらに、土地収用法七七条に規定する移転料を補償する物件は社会通念上移転させるだけの価値のある物件に限るものであるが、本件輪中堤はその利用状況からみて移転させる価値がないから移転補償の対象とはなりえないし、同法七八条の収用請求権もない。また、同法八八条に規定する通常受ける損失としては、収用による雑木材等の利用収益の喪失以外にはない(立木その他の補償は補償済みで争いはない。)。
仮に本件輪中堤がその敷地とは別個に補償の対象になるとしても、被告は本件河川改修工事により河川管理施設として右輪中堤以上に大きい効用を有する新堤防を築造したため右輪中堤はその効用を果さなくなつた。ところで右輪中堤のごとき公益物件に類推適用すべき「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」(昭和四二年二月二一日閣議決淀)一三条二項によれば、公共事業の施行により建設される公共施設により既存公共施設等の機能が完全に再現されるため、当該既存公共施設等の機能を廃止しても公益上の支障が生じない場合は土地に対する補償をすればたりるとされている。
3 文化財的価値について
別途補償を要する文化財的価値とは単に歴史上学術上の何らかの価値というだけではなく、少なくとも文化財保護法にいう「文化財」に該当し、これを国や地方公共団体の文化財保護に当る行政機関が文化財として指定するにたりる程度の価値を指すものと考えられるが、本件輪中堤は要するに数ある輪中堤の中の一つであつたところ、時代の要請により他の輪中堤がなくなつたため結果的に残存しているにすぎないもので、それ自体特に他の輪中堤と比較して特筆すべきものはなく歴史上学術上高い価値を有するものではないから、本件輪中堤は前記のごとき文化財的価値を有するものではない。原告主張の「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失


